• 2025.01.01
  • Column

あたらしいことコラム 2025.01月号

初めに

新年あけましておめでとうございます。

株式会社あたらしいことを設立して初めての正月を迎えましたが、あっという間に一年が経過しようとしています。
現状としましては、パッシブハウス認定コンサルティング業務を中心にパッシブハウス認定案件の総合(設計・施工)コンサルティング業務も受注しまして、1年目から業務依頼があったことに安堵しております。
ご依頼頂いた皆様には感謝しております。

引き続き本年も宜しくお願い申し上げます。

 

さて、ここからは本コラムについて少しご紹介です。
この1月よりメンバー持ち回りで月一コラムを掲載することになりました。
ご覧頂く皆様にとって少しでも参考になる情報をご提供出来ればと思っておりますので、ご興味がありましたら定期的にHPをご覧頂けると幸いです。

 

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戸建住宅の省エネ元年

今年は、色々と議論はあるものの今まで説明義務でしかなかった300㎡未満の建築物にも改正省エネ法が適用される年であり、戸建住宅の省エネ元年と言える年になりそうですね。


→国交省資料_https://www.mlit.go.jp/common/001627103.pdf

最低限の断熱性能基準とは言え、下限がなかったことを思えば前進したことに間違いはなく、二の足を踏んで来たハウスメーカーもオプションとして高性能タイプの商品を用意することになろうかと思いますが、ハウスメーカーは地場の工務店よりはるかに資本力があるわけで、ハウスメーカーのやる気(商品開発状況)次第では急激なボトムアップとなる可能性もありそうです。

そんな状況を考えると断熱・気密といったキーワードがよりフォーカスされて、いままで断熱・気密といったことに興味を示さなかった(プロ・エンドユーザー問わず)層に情報が届く可能性があり、「何の為の断熱・気密なのか?」を考える場面が増えるかもしれません。
そこで、ここでは初心に帰って「住まいとは何か?」という家づくりそのもののことを考えてみたいと思います。

 

住まいとは何か

家・住宅・住まい(以下、住まい)など呼び方は色々と存在しますが、人々が生活を営むには一定の屋内空間が必要です。
また、それらの形態としては、戸建住宅や共同住宅(集合住宅・長屋という呼び名を含む)いう建築的カテゴリーもあれば、自己所有や賃貸などの権利的カテゴリーもありまして、多くの方がそれらのカテゴリーが組み合わさったいずれかの住まいで暮らしていると思いますが、皆様は何故それらの住まいを選択したのでしょうか。

ちなみに、住まいを選択する場面としては、親元を離れて一人暮らしを始めるや結婚してパートナーと一緒に暮らすことになった、子供が出来たなど、何かの節目の場面が多いかと思います。

さて、先の選択をする為にはそれぞれがお持ちの条件を検討する必要がありますが、ここでは賃貸住宅の選択を踏まえて考えてみます。
まず考えられる条件として「距離(場所)」があります。
学校や職場など住まい手(若しくは同居者)が通われる場所との距離で場所を絞っていきます。
次に考えられる条件は「賃料」です。
これはご自身の希望とは裏腹にいわゆる給与額によって、ある程度の幅の中で選択することが多いかと思います。
あとは、住みやすさや知っている地域であるなどの周辺環境も条件になるとは思います。

こうして、距離・賃料・環境のバランスによって、多くの方が暮らしの拠点となる住まいを決めると思いますが、本当にそれだけで良いのでしょうか。

 

住まいの選択

ここからは少し視点を変えて、住まいを建築・購入することで考えてみたいと思います。
まずは、先と同じで条件の話になりますが、実は先ほどの賃貸の場合と差異はなく、「環境を考慮しながら(距離から)場所を決めて、用意出来る資金(ローンを含む)の範囲内で建築・購入する」という流れで住まいづくりを始める方が殆どです。

皆さんそのように進められるのでこれが正解のような気もしますが、実は大事な視点が抜けています。
本来、住まいの選択において一番初めに考えることは「どんな暮らしをしたいのか?」です。

例えば、35坪の広さが欲しいなどの建物規模のことやLDKが見渡せる対面キッチンが欲しい等の設備仕様なども暮らしの一部ではありますが、ここで私がお伝えしたいことはもっと根本的で「自然との関わり方をどうしたいか?」という視点が重要だと思っています。

自然との関わりと書くと少し抽象的なイメージにもなりますが、例えば、田舎暮らしをするなどのキーワードも自然との関わり方ですね。
コロナを経て、地方に移住される方も多く聞くようになっており、田舎暮らしを希望される方は一定数おられますが、私がフォーカスしたい自然との関わり方とは「屋内環境の在り方」のお話しです。

 

屋内環境の在り方

田舎暮らしをしたいといった自然との関わり方を考える方は大勢いらっしゃると思いますが、意外に屋外環境と屋内環境という視点の自然環境との関わり方を考える方が少ないのではないかと思っています。

弊社メンバーに家づくりを相談に来られる殆どの方は「夏暑く冬寒い家が嫌だ」という感覚をお持ちです。
これ実は、自然との関わり方の話だと思っています。

地球温暖化が進み、異常気象が日常になりつつなる今日この頃、その自然との関わり方をきちんと考えないと、折角希望を抱いて建てた(購入した)住まいが不快なものになってしまいかねません。

それらを解決する手段として「断熱や気密」といったお話に続くのですが、現状は、断熱や気密といった要素が先に来てしまっていて、本来あるべき本質の検討が見過ごされているように感じます。

そのように感じる例として、断熱・気密がきちんと施工されていない住宅が世の中にはありますが、以外にもそれがきちんと売れています。

しかし、購入された方は住まわれてから家が「寒い」や「暑い」ということに改めて気づくようですが、見方を変えると「夏暑く冬寒い家が嫌だ」という感覚があまりなかったのではないでしょうか。

それを考えると、この「夏暑く冬寒い家が嫌だ」と思える感覚を持って頂ける、家づくりにおいて需要なファクターになるような社会環境を作ることが本来一番初めにやらないといけなかったことかもしれません。

「もうそろそろ、夏暑く冬寒い家で暮らすことはやめませんか?」

 

あたらしいことが目指すこと

ここまで、戸建住宅(所有)と賃貸住宅の話を織り交ぜて書いてきましたが、いずれも暮らしの中心となる住まいという意味では同じだと思っているので、あえて行ったり来たりしてみました。

我々が目指すことは、住まいの選択肢を増やすことです。
例えば、生涯未婚率が男女ともに10%を超えている社会環境を考えると、所有することに興味がない方や諸事情により賃貸住宅で暮らす方々の中にも快適な住まいで暮らしたい方はおられるはずで、「一生賃貸でも快適な暮らしを」といった選択肢もあるべきだと思っていますが、賃貸は(ほぼほぼ)夏暑くて冬寒い住宅しかない環境は変えないといけません。


→生涯未婚率資料、厚生労働省HPより

また、戸建住宅を建築すれば、きちんと断熱・気密がされた住まいで暮らすことは可能ですが、その反面、大事なことなので再度書きますが、「断熱・気密がきちんと施工されていない住宅がきちんと売れている」という状況は、施工する側に責任はありますが、ユーザー側に正しい住宅リテラシーがあれば、売れることはないとも思っています。

皆様の暮らし方に正解はありません。
冬に少し寒いぐらいの家の方が(やせ我慢ではなく本当に)好きという暮らし方を否定はしません。
しかし、快適に暮らせる技術があることを知っていて体感したことがあってそれを選択することと、知らなくて選択することは全く違うと思います。

今までは、過去の経験のみで住まいを選択してきたと思いますが、本来は、賃貸であれ所有であれ、住まいを選択する場面になったら少なからず勉強が必要ではないでしょうか。

きっと、その勉強は早い方がより経験も積めるので良いと思いますので、例えば、学生さんが賃貸を探す時から「住まいとは何か?」を少し勉強してみると良いかと思います。

全ての方が正しい知識を持って、ご自身の目指している暮らしを実現できる住まいを選択出来る、そんな世の中になることを切に願っています。

著/丸山晃寿

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